学生時代の病院実習で学んだこと(当時の記録から)

公開日: 2013/05/08 MSW 思索


とあることがきっかけで学生時代の論文等のデータを整理しているのですが、HYが大学4年生のときに病院実習にいった際の、まとめ記録がありました。(7年前に書いたものです)

今読み返すと、当時お世話になった実習先のバイザーの方に、いかに多くのことを教えていただいたのか、そして、14日間で学んだことの多くが、HYというソーシャルワーカーの職業的価値観を熟成させる基盤を形作っているということがわかります。

HYという個人を知っていただく上でも、そして、もしかしたら他の方の何かしらの役に立つかもしれないと僭越ながら思いましたので、共有をさせていただきます。

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実習で学んだもの

基本的にソーシャルワーカーの方の一日の業務に同席させていただく実習を行う。ケースカンファレンス、福祉制度オリエンテーション面接、入院相談外来、精神科救急の再診察、介護認定調査場面、その他、個別のケースの面接場面に同席させていただく。


Ⅱ 実習をとおして学んだこと


1、 ソーシャルワーク援助の根底にあるもの。専門職としての価値観。

ソーシャルワーカーが行う事柄の根底には常に「患者・家族の最善の利益」がある。
実習中幾度となく、そのことに気づかせられる場面に出会った。

ソーシャルワーカーが院内、院外問わず、多くの他職種と手を繋ぎ、互いを理解し合い、そこで築かれた信頼関係は、結果として患者・家族にとっての利益となる、等。ソーシャルワーカーが行う業務は、全ては「患者・家族の最善の利益」のためなのである。文字にしてしまえば当たり前のことのようだが、さまざまな職種が交わる病院という場において、ソーシャルワーカー自身が自らの立ち位置を明確にし、ソーシャルワーク援助を行っていくためには、「自分は誰の利益のために存在するのか」という言葉を常に自分自身に問いかけていかなければいけないのであろうと私は思った。

そして、ソーシャルワーカーの専門性とは、自分という人間の価値観の上に成り立つものではないか、と実習を終えて思う。ソーシャルワーカーは自分という人間を使って、クライアントと向き合う。自らの価値観、専門職としての価値観をきちんと持っていなければ、目の前にいるクライアントの言葉に巻き込まれてしまう。共感と巻き込まれることは違う。しかし、自らの価値観、立ち位置が明確であれば、巻き込まれているということも自覚することが出来る。

授業で幾度となく聞いてきた「自己覚知」がなぜ大切であるか。それは、ソーシャルワーカーという職業が自分という人間をベースとして、その上に専門性を築いていくものであるからであると今感じている。


2、他職種との連携について。

大学の授業において、「連携」という言葉。そしてそれがいかにチーム医療を行っていくうえで重要であるかということを幾度となく聞いてきた。言葉としての「連携」。その重要さは頭に入っていたつもりであったが、実際、実習に行くまでは、実感できなかった。 

実習を終えた今、連携が持つ意味は「各専門職同士が、患者・家族の最善の利益をチームで考え、共通認識として持つこと」であり、そして、他職種同志が歩み寄る先、その中心には患者・家族がいるのだと強く感じている。

どんなときも患者・家族を置き去りにして支援を行うことはできない。なぜなら、困難・問題を抱えているのは患者・家族であり、その解決の主体は患者・家族以外有り得ないからである。

「連携の意義」それは、クライアントとなるべき人間を理解し、その人たちにとっての最良の利益とは何かを考え、最善の支援を行っていくためのプロセスを創り上げていくこと。そして連携を可能にするには、他の職種にソーシャルワーカーの仕事をしっかりと認識・理解してもらう必要があると感じた。

そしてそれを成し得るには、日々の業務の中で、ケース依頼をしっかりとこなす等、ひとつひとつの業務の中で信頼を得ていくこと、それが他職種との連携の土台になると強く感じた。



3、社会資源の活用について

患者が退院し、地域に戻っていく際、患者・家族を、最適な社会資源に結びつけるということは、患者・家族の側に立った支援を行うソーシャルワーカーならではの役割である。

実習中、相談室でのやり取りを聞いていると、ソーシャルワーカーにとって、地域にある社会資源の存在をしっていることは当たり前であり、その社会資源がどのような特性を持っているか、どのような職員が働いているか等までを頭に入れて働いていることが非常によく理解できた。社会資源を使いこなすには、それ自体についての理解がされていること、そしてまた、地域における社会資源、そこで働く専門職との信頼関係を築くことがいかに大切であり、それが成されて初めて、社会資源を「活用」すると言えるのであろうと感じた。


4、医療スタッフ・患者家族間の調整

医療の現場において、患者・家族が医療スタッフに聞きたいことを聞ける、という環境を作ること。そして、そういった場を設定することは、患者・家族にとって大きな安心をもたらすことであると思う。

 医療スタッフと患者・家族の話し合いの場においては、患者・家族がなかなか言えない、聞けない、聞きにくい、ということは往々として存在する。その場に患者・家族の視点を持つソーシャルワーカーが同席することで、患者・家族に代わって質問をする、医療スタッフの話を噛み砕いて伝えることも出来る。

医療スタッフと患者・家族の距離を縮めること、両者の橋渡し役、調整役としてのソーシャルワーカーの役割は、患者・家族が有する権利を擁護していくことにもなるのだと感じた。


5、これからの自分の課題

 実習を終えて、今自分に一番必要なのことは「感性を磨くこと」であると感じている。面接等、クライアントと対峙する時間の中で一体いくつの気づきを得ることが出来るか。それは自らの感性にかかっていると実習中に強く感じた。

ソーシャルワーカーは困難を抱えたクライアントと対峙する。いくら客観的に見て、クライアントが抱える困難・問題が明確であっても、ソーシャルワーカーは何よりもクライアントの言葉を大切にする。なぜなら、クライアントの言葉でしか、困難は語られることはないし、「したい」という未来を表す言葉も同じくクライアントの言葉でしか語られないからである。

支援、援助とよく言うが、ソーシャルワーカーが決定することはできない。選択・決定し、自らの人生を勝ち取っていくのはクライアント自身である。

だからこそ、その選択・決定を傍から支えていくソーシャルワーカーには、目の前にいるクライアントの言葉・仕草・表情、そういったものをひとつでも多く汲み取ることが出来る感性が必要であると私は実習中に強く感じた。

クライアントという人間を理解する、理解しようとする過程が、ソーシャルワーク援助の入り口だと私は思う。理解するには、クライアント自身の言葉に耳を傾ける他ない。そして言葉をどれだけ汲み取れるかは、ソーシャルワーカーの感性にかかっている。感性を意図的に鍛えるということは非常に難しいことであるが、私は現場に出る前に、自分なりの方法で感性を磨いていきたいと思っている。


Ⅲ まとめ

実習を終え、早2ヶ月。私は今、ソーシャルワークがおもしろくて仕方がない。

実習中、心が躍動する瞬間がたくさんに出会った。心を躍動させてくれたもの。そのひとつひとつが、ソーシャルワークというもののおもしろさを私に教えてくれたように思う。

人は大きな困難、人生における大きな生活の変化を目の前にしたとき、うろたえ、何をしたらよいのかわからなくなる状況に陥ることがある。しかし、ソーシャルワーカーの患者・家族のペースに合った関わりによって、困難を抱える患者・家族自身が、自らの困難を解決するための主体者となっていく、「変わっていく」、「変わろうとしていく」という過程は、実習生の私の目でも確かに見てとれた、そして、人間がもつ強さというものに、驚き、強さを得ていく、その変化の過程に関わることのできるソーシャルワーカーという存在に強く惹きつけられた。

また、ソーシャルワーカーは困難を抱えた患者・家族と出会い、ソーシャルワーカーは患者・家族との関わりを通して、今、社会に存在する問題・不条理さを「知る」のであると思う。患者・家族の背中にある、社会に存在する問題・不条理さを知れる位置にいるソーシャルワーカーであるからこそ、社会を変えていくために発信し、行動を、ソーシャルアクションを行っていかねばならないと強く感じた。


「患者さん・ご家族の「ああしたい、こうしたい」を
どんな状況であっても実現しようと行動するのがソーシャルワーカーなの。
ソーシャルワーカーはどんなときだってあきらめてはダメ。
医療チームの中で、最後まであきらめない存在がいるっていうことは
チームの士気さえもあげるのよ」


実習中に頂いた言葉である。

あきらめるということは自分を信じられなくなること。そして目の前にいる患者・家族の持つ力を信じることができなくなることであると私は思う。

ソーシャルワーカーという職業には、多くの可能性がある。私は常に人と社会にアンテナを張り、志を高く、そして、その可能性を実現していきたい。そして自分を、目の前にいる人間の持つ力を信じ、支援を行っていけるソーシャルワーカーになりたいと、実習を終えた今、強く思っている。


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