対人援助職に必要な3つの基礎的な技術〜SCAで開発予定の研修プログラムの基本的考え〜
公開日: 2013/10/01 MSW SCA SW解体新书制作委员会 キャリアデザイン 教育 思索 自己覚知
内容は、対人援助職の仕事の土台を成している基礎的な技術に焦点をあてます。
”技術”と称したのは、それが誰しもトレーニングによって得ることができるものであるからです。
本エントリでは、以下、SCAの独自研修プログラム開発の基本的な考え方をお伝えさせていただきます。
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【本エントリ目次】
1.対人援助職に求められる3+1能力とは?
2.対人援助職に求められる3+1の能力を構成する技術とは?
2-1.問いを立てる技術
2-2.言語化する技術
2-3.自分を知る技術
3.再現性のある、専門職としての能力を得るために
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1.対人援助職に求められる3+1の能力とは?
対人援助職に求められる能力=(実践能力+教育能力+研究能力)+セルフケア能力
(実践能力+教育能力+研究能力)は、言わずもがな,専門職と呼ばれる職業において、必須とされる3つの能力です。
それに加え、対人援助職の場合は、セルフケア能力の獲得により、その都度発揮できるパフォーマンスの質の向上、均質化が可能になります。
たとえ、高い能力(実践能力+教育能力+研究能力)があったとしても、それらを常に最高のパフォーマンスで発揮する能力(セルフケア能力)がなければ、高い能力(実践能力+教育能力+研究能力)を最大限発揮することができません。
ですから、セルフケア能力は、対人援助職にとって、
非常に重要な”キー能力”だと私は考えます。
(セルフケアの必要性については、また別エントリで書きたいと思っています)
2. 対人援助職に求められる3+1の能力を構成する技術とは?
対人援助職に求められる能力=(実践能力+教育能力+研究能力)+セルフケア能力
上記能力各々を構成している技術は、以下の3つであると考えます。
1.問いを立てる技術
2.言語化する技術
3.自分を知る技術
実践能力、教育能力、研究能力、セルフケア能力。
これらの能力を得て、高めていくためには、上記3つの技術が必要不可欠です。
以下、3つの技術について、記します。
2-1.問いを立てる技術
行動するためには問いが必要です。
例えば、私たちは「なぜ?」と思ったとき、人に聞いたり、自分で本を読んで調べたりします。「なぜ?」という問いこそが、行動を生み出す資源なのです。
ですから、自分にとって「良質な問い」を立てることができれば、その結果である行動にも影響を与えることになります。
常に誰かが自分に「問い」を投げてくる環境を想像してみましょう。
何かをするたび、「ねえ、あなた、なんでいま、そんなことをしたの?」と。
そのような環境があるとしたら、常に「問い」に対するこたえを探し続けなければならず、頭の休む暇がないでしょう。ですが、日常生活、仕事においても、「ねえ、なぜ、そう思うの?」等という「問い」を向けられる機会はそう多くはありません。
「問いを立てる技術」は、言い換えれば、『「問われる環境」が存在しなくても、自分の中に「考え・行動するための材料」を生み出すための技術』と言えます。
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メルマガ:ソーシャルワーク言語化のススメ21-25号では、
「問い」を以下のテーマで扱いました。
・ 質問することの意味とは?
・ 問われる環境が生み出すものはなにか?
・「問い」の射程距離について考える
・「問い」を立てるレッスンをしよう!『定義化』
いずれ、当ブログでも一部をご紹介できればと思っています。
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2-2.言語化する技術
考えを整理し言葉にする技術を獲得すること。
その重要性を、当ブログでは一貫してお伝えをさせていただいてきました。
本項では、改めて詳しくお伝えすることはしませんが、以下が、現時点での私が出した問いへの答えです。
【なぜ、対人援助職に言語化する技術が必要か?】
1. 現場での実践力を高める(対・クライエント、他職種)
2. 職業的価値を獲得、自己覚知を為す(対・自分自身)
3. 各々の実践から得た学びを共有する(対・業界)
4. 教育的機能を高める(対・後輩、これから業界に入ってくる人たち)
5. ソーシャルアクションを遂行する(対・社会)
6. ソーシャルワーカー(対人援助職)の社会的認知度を高める(対・社会)
【参照エントリ】
「なぜ、ソーシャルワーカーに言語化する力が必要なのか?」という問いについて考える
2-3.自分を知る技術
対人援助職にとって、”自分”とは、全ての源泉です。
”自分”という源泉から、問いを立て、言語化し、行動を為す。
上記を組み合わせ、”セルフケア”をも行なっています。
(セルフケアについては別エントリで後日詳しく書きます)
外部からの要素に加え、自分の変化を知覚することができれば、
その分、問いを立てるための材料は多くなります。
対人援助職の領域では、「自分を知ること」=「自己覚知」と言います。
自己覚知とは、「自分がどういった価値観に則り仕事をしているか、自分の価値判断の傾向を知ることで、クライエントへの援助をよきものにし、不利益を生み出さないようにする」というように語られることが多いですが、私は、以下のように考えています。
「自分を知ること(自己覚知)」は、対人援助職の全ての源泉である”自分”という存在から、多くのものを得るために必要なこと。
そのように定義すると、自分という源泉から、多くものが得ることができれば、それをもとに、「問いを立てる」、「言語化する」ことができます。そして、それはセルフケア能力をも高めるために活きるわけです。
「自分を知ること」についても、メルマガにて、以下の項目で”私自身”をサンプルにした内容を書きました。
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メールマガジン:「変化を知覚するための心と身体と環境をつくる」シリーズ
【心:編】
・1.自分の心を整える方法をつくる
・・・感情を整える
・・・余白を生む
・・・言葉を選ぶ
・・・捨てる(捨てられないモノ・コトを知る)
・・・為すべきこと、為さなくてもよいことを決める
・・・マイ整えスタイルをつくる
・2.他者との関係性から自分の心を整える
・・・好きな人、嫌いな人と、その理由を知る
・・・心地よい距離感・時間を知る
・・・時間と共に関係性を育みたい他者を知る
・・・分人ラベリングをする
・・・ロールモデルを融合しオリジナル・ロールモデルをつくる
【身体:編】
・1.自分の身体を知る。
・・・自分のエネルギーの総量を知る
・・・自分のエネルギーの浪費を防ぐ
・・・自分のエネルギー回復法を知る
・・・自分が求める欲求を知る
・・・自分の身体が嫌がることを知る
・・・ベストパフォーマンスを出せる身体の状況を知る
・2.自分の身体をつくる…054号で配信予定。
【環境:編】…予定
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3.再現性のある、専門職としての能力を得るために
冒頭にも述べましたが、SCAの研修プログラムは、
対人援助職の仕事の土台を成している基礎的な技術に焦点をあてます。
”技術”と称したのは、それが誰しもトレーニングによって得ることができるからです。
自分が採用している援助の枠組みと、自分が為していることの土台を形作っている”構造”に自覚的であること。この2つの自覚を得ることができると、対人援助職として、様々な援助の過程が展開できるようになると考えています。
「問いを立てる技術、言語化する技術、自分を知る技術」
『この3つの技術を得て、高めていくことで、誰しもが、再現性のある「対人援助職に求められる能力=(実践能力+教育能力+研究能力)+セルフケア能力」を得ることができるようになるはずだ。』
わたしは、この問い(仮説)に対して、真摯に向き合い、深め、思考・実行・試行していこうと思っています。
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Social Change Agency を設立しました。
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