チーム医療において、医療ソーシャルワーカーにできること(他職種への関わり編)

公開日: 2014/03/08 MSW チームアプローチ 連携



私は現在2カ所目の勤務先で働いています。
前職場も現職場も、BOSSは20年超えの医療ソーシャルワーカーです。
院内でソーシャルワーク部門が確立され必要とされていることを感じるたびに、それが、いかに恵まれた環境であるかということを思います。

数多の先達たちが言っているように、ソーシャルワーカーという仕事は、決して1人では完結し得ない職業です。そのことを考えたとき、まずは自分の所属機関において、「どのようにソーシャルワーク部門を確立し、必要性を感じてもらうか」その土壌をどのように創るかということを考えます。

本エントリでは、「チーム医療において、医療ソーシャルワーカーにできること(他職種への関わり編)」と題し、諸先輩方が確立してきたソーシャルワーク部門の土台をより強固なものにすべく組織内でとるべきアクションについて考えていこうと思います。

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目次
1.まずは、他職種にソーシャルワーカーの活かしどころを理解してもらう
2.「生活支援」視点を共有することで、チーム全体としての能力を高める
3.組織内コンサルテーション能力を高めることで生まれるもの

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1.まずは、他職種にソーシャルワーカーの活かしどころを理解してもらう


まず大前提として、医師、看護師、その他コメディカルスタッフに、医療ソーシャルワーカーの活用しどころを、ケースを通じて都度伝えていくことは、とても大切なことです。


というのは、少人数しか配置されていないソーシャルワーカーが、院内の全患者さんを完全に把握するのは困難というかほぼ無理だからです。(スクリーニングシートなどを活用して、病棟の看護師さんとソーシャルワーカーで、入院した患者さんの退院を阻害するかもしれない要因をチェックし、困りごとが生じそうな方には早期介入をおこなうというのは、多くの医療機関で取り組みがなされていることだとは思いますが、それでもなおタイムリーに全患者さんを把握することは困難です)


であるからこそ、院内のスタッフ(特に患者さん家族と密接に関わる医師、看護師)に、ソーシャルワーカーの「活用しどころ」を理解してもらい、うまくつかってもらうことができれば、それがひいては患者さん家族の利益を守ることに繋がります。


端的に言うと、表現が悪いですが、「ソーシャルワーカーにお願いすると、仕事が楽になる。自分たちだけでは対処が難しいことが、スムーズに解決した」という「体験」を医師や看護師の中に残す、そういう仕事を重ねていくこと「も」大切だと考えます。


よく、看護師さんたちが、福祉的視点をもって、退院調整などに関わることで、病院のソーシャルワーカーの仕事がなくなると言説を耳にすることがありますが、私はそんなことは微塵も思っていませんし、極論、もしそうなったとしても、それが患者さん家族の利益を生み出すことができるのであれば、それでもいいのかもしれないとさえ思います。


ですが、複雑化された問題を解きほぐしたり、「生活支援」の視点をベースにして、その方々が有している困りごとの全体像を共有し、その上で優先順位を立て、できることは患者さん家族にやってもらい、支えるための地域のチームを結成したり、適切な部署部門機関にリファーしたりする能力は、未だソーシャルワーカーたちに優位な能力であると考えています。

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2.「生活支援」視点を共有することで、チーム全体としての能力を高める


例えば、点滴をしながら在宅に帰る患者さん。点滴の交換等の方法を家族に病棟の看護師さんが指導しなければならないとき。

点滴に混注(いろいろな薬剤を点滴の側管から入れること)がある。
そうすると、その分、手技は複雑になり、家族の負担は増えます。

そのような状況下で、医療ソーシャルワーカーは考えます。
この点滴の使用は、医療的に「必ず」必要なものなのか。
シンプルにして、混注せずに済ませることはできないのか。

病院での医療行為のスタイルは、病院だから選択されているものも多く、

実際に、自宅に帰るにあたり、医療行為のスタイルは、その人の生活環境や社会的背景を鑑みて、選択することができる場面も多く在ります。

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例えば以下のようなケースも。

糖尿病でインスリンの注射を打たねばならない患者さん
独居で、軽度の認知症もある。社会資源も限られている。

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MSW「○○さん、そろそろ退院できそうだってC先生から連絡があったのですが、インスリン、おひとりで家で注射できそうですか?」

看護師「ええと、どうだろう…。今日は、看護師ではなく、本人に自分でやってもらうようにしてもらって、ご自身で安全にインスリン注射が打てるか、評価をしてみますね」

MSW「では、またあした、教えてください」


翌日
MSW「おはよーございます。○○さん、インスリンの注射、自分で打てそうでしたか?

看護師「メモリをあわせたり、そういう手順に少し心配があります…」

MSW「そうですかー。ちょっとご本人の病室に行って聞いてみましょう」

〜病室〜

MSW「○○さん、どうですかー?注射、自分でできそうですか?」

患者さん「ちょっと心配だなあ。看護師さんに打ってもらった方が安心だよ」

MSW「そうですかー。自分で打つの大変ですよね。注射以外の方法があるかどうか、主治医の先生に聞いてみましょうか!それとも自分で聞けます?」

患者さん「おお、そうしてよ。自分で難しいこと言うの大変だから、頼むよー」


そこに、病棟回診にきた○○先生登場

MSW「あ、先生おつかれさまですー。ちょうどよかった!○○さんのことなんですけど、インスリンの注射って絶対必要ですか?飲み薬ではだめなんでしょうか?」

看護師「昨日からご本人に、やっていただいたのですが、手順をおぼえるのがちょっと大変みたいで…。看護師たちでも話し合ったのですが、やはり内服のほうがいいのかなと思って」

医師「そっか。別にインスリン注射じゃなくても大丈夫だから、明日から内服に変えようか。○○さん、聞きましたよー。注射、大変なんですってね。明日からお薬にかえるから、安心してねー」

患者さん「わかりました。そっちのほうが楽だし安心だよ」

看護師「○○さん、お薬は自分で管理して飲み忘れないし、これで大丈夫ね!」

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かなり、ディフォルメしましたが(笑)、同業者の方であれば「うんうん」と頷いてくれるのではないかと思います。

インスリン注射は医療行為です。

この患者さんの能力等をみるに(看護師さんの専門職としての評価を聞くに)、それは難しそうだ。そこで、MSWの中に疑問符が生まれます。

「ご本人が家に帰るにあたって、本当にインスリン注射でなければいけないのか?


その疑問符をもとに、患者さん本人の意思と、医師と看護師の評価を確認しながら、病院での医療→家での医療にシフトさせていくのです。もちろん、生活視点の能力のある医師、看護師は、MSWがアプローチせずとも、「シンプルケア」化して、調整をしていきます。

こういった「生活視点」の疑問符が浮かぶかどうかは、”慣れ”だと考えます。
ですから、医療ソーシャルワーカーが関わる中で、医師や看護師にそういった視点への気づきが生まれ、チェック機能が働けば、それは結果として、チーム全体としての能力の底上げになるのだと考えます。

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3.組織内コンサルテーション能力を高めることで生まれるもの


このような、組織内コンサルテーション能力が高いソーシャルワーカー部門は、コンサルテーション能力を発揮することで、チーム全体の生活支援能力を底上げできるので、結果として、クリエイティビティを優先した仕事を行うことが出来、それによって、新しい手数は増えていく故に、どんどん部署内の力は向上していくのです。


その結果、真にソーシャルワーカーが資源を投入すべき患者さん家族に、時間と能力を注ぐことができるのだと思います。(つまりは、既存の保ち札では、対応不可能な事案にであったときに、新しい一手を創りだす、つまりはクリエイティビティな部分です。


院内連携は、常に「未来志向」で考えるべきです。

「ああ、なんだよ!くそ!」とたとえ、思っても、「この患者さん家族への支援を一緒にすることで、未来のチーム力は底上げされるのだ」という思考展開をすれば、為すべきことってそこまで多くないはずなのです。



一度、病棟で医師や看護師さんに対応してもらえるようになると、当然、「医療的知識」がある職種が対応したほうがいいことは、たくさんあります。


新しく赴任した医師や看護師には、
「こういうときことがあったときには、言ってくださいね」と一声かけられる関係に早くなる。そうすることで、結果として、ソーシャルワーカーの業務に余裕が生まれ、本当にソーシャルワーカーが前線に立って、対応しなければ突破することが難しいケースに最大限リソースを投入することができる環境が整うのだと思っています。


院内連携は未来志向で考えよう!
そうすると、病棟でのコミュニケーションも、今よりは楽しくなる?はず!!


【チーム医療についてもっと深く学びたい方へ】








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