自己覚知論:「対角線にある思考・価値観」を視界に入れておくことの意味について考える

公開日: 2012/07/23 MSW 思索

以前に記したエントリ『「関係性は何のために築くのか」という問いについて考える』において、


『ソーシャルワーカーは対象となる人にとっての「親しい、愛すべき他者」という役割ではなく、極論、ソーシャルワーカーは、対象となる人にとっての社会資源(ツール)のひとつに過ぎないのです。』


と記しました。

私は、物事を考えたり、文章に起こしたりする際に「極論」を考えてみることを好みます。理由は、「自身の思考のリーチ(射程距離)を拡張するため」です。



同一の事柄について考えれば考えるほど、思考の焦点は合うかもしれませんが、視野が狭まることがある、というのは多くの方が経験したことがあるものだと思います。思考のタコ壷化とでも言えるでしょうか。


本エントリでは上記を踏まえ、自己覚知論:「対角線にある思考・価値観」を視界に入れておくことの意味について考えると題し、その意味するところを考えていきたいと思います。




タコ壷化を防ぐための、「比喩的表現の使用」と「極論の提示」



思考のタコ壷化を極力回避するためのソリューション(解決策)として、私は「比喩的表現の使用」と「極論の提示」を採用しています。




「比喩的表現の使用」については、過去に「ソーシャルワークを比喩的表現を用いて表現する理由」で以下のように述べました。


比喩的表現を用いて表する意味というのは「ソーシャルワークを自身の既存のフレームの外から眺めること」にあるのだと、思っています。

「自身の既存のフレームの外から眺める」ためには、ある種の「論理の破綻」が必要になるのだと思います。その方法の一つに「比喩的表現」を用いるのだなと最近気づいたのです。

私は、「大切なことに気づいた!」という既存のフレーム(職業的価値)を脱ぎ捨てる勇気を持たないと、いつまでたっても古臭い皮から脱皮できないのでは、という危機感をいつも抱いています。なので、そこに比喩的表現を用いて「論理の破綻」を意図的に起こすことで、「自身の既存のフレーム(職業的価値)」の外に出て、そのもの自体の全体像を眺めようとしているのだと思っています。



「自身の既存のフレーム(職業的価値)」は援助者にとっての「鎧」のようなものです。自身を現場で奮い立たせ、かつ、自身を守る「ヨロイ」であるわけです。やっとの思いで手に入れた「援助者としての鎧」を脱ぎ捨てることには勇気がいります。せめていっぺんには脱ぎ捨てることはできないにしても、自身の鎧がどのようなものかを眺めるために、比喩的表現を用いて、論理の破綻を起こし、「ソーシャルワークを自身の既存のフレームの外から眺める」ということが意味を持つのだと思っています。

 極論の作り方



極論の提示」については、先に自身の思考のリーチ(射程距離)を拡張するため」と述べました。




「ソーシャルワーカーは、対象となる人にとっての社会資源(ツール)のひとつに過ぎない」というのはシニカルな極論ではあるのですが、どのような論においても、自身の思考のリーチを拡張する上で、「極論」を生み出してみるという行為は意味があると思うわけです。




というのは、『思考というのは「有する価値感」が形作られる過程で、どうしても収縮する傾向がある』と考えるからで、「解答を得たがる思考に対して、極論によるリーチの拡張を図る」ことで、自身の手持ちのリーチで届く「答え」に安住してしまうことを回避することができるのではと考えています。




そういった意味で自身の中の「極論の作り方」を知っている人というのは、『思考というのは「有する価値感」が形作られる過程で、どうしても収縮する傾向がある』ということを体感していて、それに対するカウンター(対抗策)としての「極論の作り方」を考えているのだと思うわけです。




「収縮しつつある価値観」を一旦解放して、ゼロベースで再考するために



「ソーシャルワーカーは、対象となる人にとっての社会資源(ツール)のひとつに過ぎない」というのは、「対象となる人との関係の構築」に終始していた3年目くらいの頃の自分の「収縮しつつある価値観」を一旦解放して、ゼロベースで再考するために採用した「思考のリーチを拡張するための極論」だったのです。




「比喩的表現の使用」と「極論の提示」を用いることにより、自身が採用し、深化させていこうとする思考・価値観の「対角線にある思考・価値観」を意図的に視界に入れていこうとする試みが可能になる。




これは、言わば、第三者的な「チェック機能としての自己」をどう有するか、という論にも通じて来るものですが、その話については長くなりそうなので、また別の機会に記せればと思います。







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