ソーシャルワーカー淘汰時代の到来〜社会のシステムエラーと援助者の間にある共犯関係からの脱却〜

公開日: 2013/12/14 SCA 思索 社会起業 社会起業家 社会問題


本年8月にSocial Change Agencyの創立を宣言し、早4ヶ月が経った。

本エントリでは、SCAが構築を目指す、
”Social Change Agent System”の基盤を形成する考えについて記す。

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目次:
1.Social Worker と Social Change Agent は同一軸上に存在する。
2.ソーシャルワーカーの強みは、クライエントの背中に「社会の不条理さ」をみること
3.社会のシステムエラーと「援助する・されるという二者関係」の間にある共犯関係
4.ソーシャルワーカーと名乗る人間たちが増える未来
5.Social Change Agent System 1.0

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1.Social Worker と Social Change Agent は同一軸上に存在する。



ソーシャルワーカーは、日々現場でクライエントと対峙している。
クライエントが抱える問題はさまざまだが、共通することがひとつある。


それは、”問題の出荷元(根源)”こそが、社会のシステムエラーであるということだ。


出荷元から流れ出る”問題”という名の濁流に呑まれ行く人(クライエント)たちを、クライエントに一番近い”現場”という最前線で防波堤のように”守る”のが、社会を支えるソーシャルワーカーだ。

社会のシステムエラーという”問題の出荷元”まで駆け上がり、ときに壊す。創るために壊す。社会のシステムエラーを”書き換える”という”攻め”にうって出るのが、社会を変えるSocial Change Agent(社会を変革することのできるソーシャルワーカー)だ。


両者は同一軸上に存在しうる。


『いつの世も、ソーシャルワーカーは、 
クライエントの背中に存在する社会の不条理さをクライエントを通して知る。   
知ったからには、そのままにはしておけない。」

「社会を支えている全てのソーシャルワーカーは、 
社会を変えるSocial Change Agentになり得るポテンシャルを有している」


そんなことを私はここ2年ほどずっと考えていた。



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2.ソーシャルワーカーの強みは、クライエントの背中に「社会の不条理さ」をみること



ソーシャルワーカーの強みは、”クライエント側に立つ”からこそ「みえる」ものがあるということだ。それこそが、クライエントの背中に捉え得る「社会の不条理さ」だ。


しかし、現場において、ソーシャルワーカーが、”優しい瞳”しか持ち得なければ、
クライエントとの関係性は、「寄り添う」等で表される二者関係で完結する。


「援助する・援助される」という二者関係は、真に対等にはなり得ないからこそ、”閉じて”いく。”閉じて”いけばいくほど、クライエントの背後に存在する社会のシステムエラーを”捉え見た”はずの、ソーシャルワーカーの”鋭い目”はいとも簡単に曇る


なぜ、社会のシステムエラーを”鋭い目”で、”捉え続ける”ということが難しいのか?


それは、社会のシステムエラーを”捉え続ける”行為自体が、ソーシャルワーカーに「不全感」を与えるからだと私は考えている。
尾崎新氏著:「対人援助の技法―「曖昧さ」から「柔軟さ・自在さ」へ」において、この辺りの言及があったように記憶しているが、手元に無いため後日追記、引用させていただく)


誤解を恐れずにいえば、「援助する・援助される」という二者関係には、援助者側に「全能感」を付与する構造を有している。「全能感」により弛緩された援助者のカラダは、社会のシステムエラーを”捉え続ける”という「不全感の刻印」に耐えられないのだ。


なぜなら、社会のシステムエラーは、
個々の援助者の力だけではどうしようもできないからだ。


つまりは、社会のシステムエラーを”鋭い目”で”捉え続ける”こと自体が、援助者に対し、
「あきらめや不全感の刻印」を耐え忍ばせるように働く。


耐え忍ぶことを避け、楽になるには、「目を逸らせばいい」
クライエントの背中にみえる社会のシステムエラーから目を逸らし、目の前にいるクライエントにだけ優しい瞳を注ぎつつけていれば、二者関係の中で、援助者は生き続けることができる。


そっちのほうが、楽なのだ。
私はそう思うが、今これを読むあなたはどう思うだろうか?


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3.社会のシステムエラーと「援助する・されるという二者関係」の間にある共犯関係



援助者に「全能感」を付与する「援助する・援助される」という二者関係構造の大元。
それは、もとを辿れば、クライエントの問題の出荷元である「社会のシステムエラー」だ。


社会のシステムエラーと、「援助する・されるという二者関係」は共犯関係にある。


社会のシステムエラーを書き換えることができなければ、未来のクライエントは生産され続ける。未来のクライエントは、援助者に「援助する・される」という閉じた二者関係による「全能感」を付与してくれる存在として出現し続けるのだ。


そのような構造はどんな時代においても存在する。

だからこそ、社会を支えるソーシャルワーカーが、社会を変えるSocial Change Agentに成るには、『自らに「全能感」を付与する構造を有す”援助する・される”という閉じた二者関係を生み出している根源を壊し、システムを書き換える』という強烈な自己批判を有した行動に打って出る必要がある。


私は”クライエントに寄り添う”という言葉を全肯定しない。


援助する・されるという二者関係を生み出す根源こそが、社会のシステムエラーであり、クライエントに寄り添い、彼らの背中に存在する社会のシステムエラーに、気づいているのならば、”寄り添う”に表される二者関係のみに帰結するのは、茶番でしかないと私は思う。


鋭い目で捉え得た”社会のシステムエラー”に対し、
ソーシャルワーカー各々にできることがあるはずだ。


まずは、考えることからはじめてみてもいい。
小さな行動から、”社会のシステムエラー”の書き換えという仕事ははじまる。

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4.ソーシャルワーカーと名乗る人間たちが増える未来



今後10年間、クライエントの側に立つソーシャルワーカーは増える。
いや、増やさねばならない。


ここで多くは語らないが、
混沌とする社会は今まで以上に、クライエントの側に立つ人間を希求するようになる。


・社会をクライエントの側に立ち、支える人間(Social Worker
・社会のシステムエラーを書き換える人間(Social Change Agent)


両者は、この社会を生きる全ての人たちにとって、求め得る存在でもある。


”Social Worker”として社会を支え、"Social Change Agent"として社会を変えよう。
SCAのミッションは、両者を社会に増やし、生み出していくことだ。


これは、多くのソーシャルワーカーたちにとっては、望むべき未来だろう。
だがしかし、それは、ソーシャルワーカーたちが淘汰される未来でもある。


ここ数年、社会起業家、ソーシャルベンチャーと呼ばれる、
ビジネスの枠組みでソーシャルアクションを起こし、
社会的問題を解決し、そして稼ぐ人たちの出現があった。


この時流は、言葉を選ばずに言えば、
「現場のソーシャルワーカーたちにとってチャンス」でもある。
この時流にのり、ソーシャルワーカーのイメージを書き換える企てをおこすのだ。


ソーシャルアクションは、ソーシャルワーカーの専売特許などでは、無い。
いや、そもそも、私が現場に出てから、ソーシャルワーカーたちが為し得た
「社会のシステムを書き換える」規模のソーシャルアクションを私は知らない。


誤解を恐れずに言えれば、今後10年の間に、現場でクライエントに寄り添い、
観察的視座で関わりをする”だけ”の一部のソーシャルワーカーたちは、
”下請け”に甘んじることになるだろう。


「ソーシャルアクション」マインドを失い、二者関係だけに終始し、
閉じていくソーシャルワーカーは、もはやソーシャルワーカーではない。
「ソーシャル」を付する資格はないだろう。


ワーカー、働く人。
ただ、ただ、日々、投げ込まれるボールを打ち返し続ける、働く人、だ。


別にそれは悪いことではない。
ただ単に、「ソーシャル」を剥奪されただけ。それだけのことだ。
だが、剥奪後のソーシャルワーカーが真にソーシャルワーカーたる”理由”は最早、ない。


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5.Social Change Agent System 1.0



Social Change Agencyは、時流に乗り、そして新たな時流を創る。


SCAは、日本全国の多領域の優秀な人材を「クライエント側」に立たせるために、
ソーシャルワーカーに付する社会的イメージ・価値観の書き換えを行う。


有能な人材が「まずは社会の問題を知るためにソーシャルワーカーとして現場に入ろう」という考えを持ち、クライエントの側に立つことを選ぶ。そして数年後、様々なスキームで、社会問題を解決するための行動に打って出る。


そんな未来を、土壌を、つくる。そして、それは、前述したように、ソーシャルワーカーたちが「淘汰」される時代の到来でもある。


この10年間の間に、多領域の多くの優秀な人材が現場に入るだろう。
そして、ソーシャルワーカーたちは淘汰され、階層化がおこるだろう。
階層化はボリューム増加の結果であり、歓迎すべきことだ。


一部のソーシャルワーカーたちは最前線で、バッティングセンターのようにきた玉を打ち返し続ける。打ち返した玉の威力が余程のものでなければ、失速し、こちら側にまた戻ってくる。戻ってきた玉をまた打ち返す。その繰り返しで、最前線を守る。


だが、それだけでは、
問題の出荷元である社会のシステムエラーを書き換えることはできない。


ソーシャルワーカーの養成機関は、時流にあわせたマインドセットを有した人材を社会に投入し続けることを求められるだろう。今後10年は「社会のシステムエラーをぶっ壊し書き換える」側の仕事に注力できる人間を育てていく必要があると私は考えている。


SCAは、ソーシャルワーカーたちに、「寄り添う」に代表される二者関係の優しい瞳だけでなく、「社会のシステムエラーをぶっ壊し、新たなシステムに書き換えるという仕事を為す」ための「鋭さの目」をインストールする。


支える側に立つ人間を増やすためには、
今現在、支える側に依って立つソーシャルワーカーたちが、
自分たちの仕事の社会的意義や価値を社会に対して発する必要がある。



「ソーシャルワーカーを社会にセールスする」


現場には、この思考が欠落している人間が多い。
自分たちの職業が、クライエントの利益を考えたとき、
未来にどういった社会的ポジションをとるかを語れずして、
いったい何を語るというのか?


「ソーシャルワーカーを社会にセールスする」
それが結果的に、ソーシャルワーカーの社会的な価値を引き上げることになる。


クライエントの側に立ち、社会を支える人間Social Worker
そして、社会のシステムエラーを書き換え、社会を変革する人間(Social Change Agent)
両者が生態系のように編み合われた”System”


それこそが、来るべき時代を迎え撃つ、
”Social Change Agent System 1.0”だ。


日本のソーシャルワークはこの10年で変わる。
いや、変えなければならない。

そして、その後、”Social Change Agent System 2.0”へ移行する。

長く、険しい仕事になるだろう。


私は元々引きこもり気質の人間だ。
家の中に籠ってずっと本を読んでいるような余暇を過ごしたい。


でも、気づいてしまったからには、そのまましておくことはできない。
誰もやらないのであれば、誰かが旗を揚げてやらねばならない。


だからこそ、賛同してくれる仲間を求めたい。


私と同じく、気づいてしまったあなたの力を、
共に未来を創る仕事に注ぎ込んでほしい。


【恊働者募集】
社会の支え手たちを支えるシステムをつくろう 
〜Social Change Agent System構築構想〜


上記システムは、この10年を見据えた上での、構想でもある。



私たち、Social Change Agencyという舟は、
理想としうる未来を創る航海を続ける。



さあ、あなたはどうする?






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