ソーシャルワーカーが、コミュニケーションの目的を達成するために気をつけるべき3つのこと

公開日: 2013/07/16 MSW コミュ論 チームアプローチ 思索 話を聴くために必要なことシリーズ

この仕事をしていると、人と言葉とコミュニケーションに関する知見が多く求められていることに気づきます。対人援助職にとってのコミュニケーションは、「相手に何を伝え、相手に何をしてほしいか。コミュニケーションの結果、何をなしたいか。」という目的があった上で為されるものです。

この連休で読んだ池上彰氏の著作『相手に「伝わる」話し方 』に以下の一節がありました。
以下、一部抜粋し、紹介します。

専門用語を安易に使うな

私たちはさまざまな「集団」に属しています。会社、家庭、地域、趣味のサークルなど。それぞれの集団では、集団内部でだけ通用する言葉遣いや専門用語が存在します。その集団内部で話をしている間は何の問題もないのですが、その集団から一歩外に出ると、まったく理解されなくなることがあります。あるいは、誤解されてしまうことがあるのです。

いつも何気なく使っている表現が、どこでも誤解無く伝わるものなのか、それとも、その集団内部でだけ通用する特殊な言い回しなのか。集団の外にいる人と話をするとき、そのことに留意しなければ、コミュニケーションは失敗してしまうことがあります。
専門用語を外部の人に対して安易に使うのは、「こういう言い方は相手にわからないのではないか」という想像力、配慮、思いやりに欠けているからではないでしょうか。伝える相手への想像力に欠けると、コミュニケーションは失敗します。


………………………………………………………………………………

上記を読みながら、とあるケアマネージャーの方が頭に浮かびました。
その方は、看護師さんを基礎資格としてる40代くらいの方。


その方は、いつも丁寧に言葉を選んで話されます。
電話でも、対面でもそれは変わりません。自分の意を、現在進行形で、どう伝えれば、相手に伝わるかということを考えている=こちら側に対する配慮、思いやり、真摯さが伝わってくるのです。そうするとこちら側も、言葉を選びながら、相手の意をきちんと理解し、一緒にコミュニケーションの目的を達成できるようにという気持ちが強くなるのです。

と前振りが長くなりましたが、表題「ソーシャルワーカーが、コミュニケーションの目的を達成するために気をつけるべき3つのこと」についてお伝えをしていこうと思います。


1.コミュニケーションの目的の達成度をあげるには、配慮、思いやり、真摯さが必要。

自分の意を伝える相手側に対する配慮、思いやり、真摯さ。
それが相手に伝わると、相手側も「この人の伝えたいことを、しっかりと受け止め、理解したい」という気持ちが芽生える可能性が高くなります。(相手の理解度、感受度にもよりますが)

相手側の「この人の意をきちんと理解したい」という気持ち・姿勢を得ることができれば、コミュニケーションの目的は8割がた達成されたといっても言い過ぎではないかもしれません。

真摯に自分の意を伝えようとする→伝えられた側が、伝えられたことを真摯に理解しようとする。

この流れが、両者の間で確立できれば、その後のコミュニケーションのプロセスは楽になりますし、プロセスの中で、より良好な関係性が築かれる可能性が高くなります。



2.言葉の数が多過ぎるのはNG

まくしたてるように多くの言葉を吐き出し、激昂する人、みなさんのまわりにいませんか?

相手を追い詰め、やり込めることが目的のコミュニケーションであれば、それはそれで威力を発揮しますが、「相手に自分の意を伝え、行動を起こしてもらう」ということを目的としたコミュニケーションの場合は、言葉の数が多過ぎることはマイナス要素になります。というのは、何が大切なことで、相手が自分に何を伝えようとしているのか、という理解に、相手に多くのエネルギーを消費とさせてしまう点で、戦略的にNGだからです。だから、言葉をきちんと選んで伝える必要があるのです。

100のうちどれが大切かを見極めるより、10の中でどれが大切かを見極める方が容易であることは自明です。


3.相手の行動を変える・促すことを目的としたコミュニケーションにおいて大切なこと

「とある事実に対する相手の言動を受け止めた上で、それを承認し、そして、改めてほしいことや、+αのアイデアを伝える」これが「相手の行動を変える・促すことを目的としたコミュニケーション」におけるベストスタイルです。

クッションで優しく受け止め、クッションの低反発力で、相手に「改めてほしいことや、+αのアイデア」を伝えるのです。

これを、拳を振り下ろして、やってしまうと、相手も人間ですから、負傷し、相手に不快な感情を抱き、結果として、「相手の行動を変える・促す」というコミュニケーションの目的の達成度は著しく低下します。

相手の自尊感情を傷付けず、かつ感情的な波風も立てず、クッションのような優しさと柔らかさで、相手を包み、そして、低反発力で、返す。

このスタイルは「急がば回れスタイル」です。相手にお願いしたい行動を、相手との関係性を良好に築き上げながら、為してもらう。つまりは、相手との関係性を時間軸の中で勘案した、「相手との関係性を育てていく」という長期的な視点をもったスタイルです。


頭ごなしに否定し、他者の行動を改めさせようとするのは、愚の骨頂です。
一瞬の改善(一瞬のプラス)は見られるかもしれませんが、長期的な視点「相手との関係性を育てていく」という視座から見ると、明らかにマイナス、です。(相手との関係性が築けないことで、相手の成長にとってのプラス要素に自分がなれない、という点で。)


人間の承認欲求をきちんと理解した上で、それに則った、コミュニケーション・スタイルを得ていくことで、無駄な感情的軋轢や、感情的疲弊を軽減することができます。そして、相手にもプラスの要素を与えることができると思うのです。


言葉の使い方ひとつで、他者との関係性も、コミュニケーションの目的の達成度も大きく変わっていきます。だからこそ、わたしは、対人援助職として、言葉とコミュニケーションについて学ぶ必要があると思っています。


池上氏のNHK時代の知見がふんだんに盛り込まれた学び多き良著でした。

………………………………………………………………………………

2ヶ月に1回、ソーシャルワークを語る会を開催しています。



【こちらもどうぞ】
Blogエントリ目次:当Blogのエントリをカテゴリ別にまとめました。
アンケートを実施しています:当ブログへのご意見をお聞かせください。
「ソーシャルワーク言語化のススメ」:メールマガジン刊行中です。

  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A